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「……あの……襲われたって?」
ショッキングな言葉に、まともな返答ができるほど、経験豊富ではない。
「始めは、双子のお兄さんと恋人同士だったと、光くんから聞きました。
三角関係だったんですか?」
中村晃大が残した、美咲さんの巨大な絵画。
肖像画とは違う、闇と光を持った、"蝶"が印象的な作品。
あの絵の中の美咲さんは、……泣いていた。
「晃大は、限りある命と、"動"を羨望する気持ちから
少し歪んだ気持ちで私に近づいたの。」
「……そんな人を、
好きになって結婚までしちゃったんですか?」
断ったはずのおかわり。
いつの間にか
また、カップに癒される香りのお茶が
注がれていた。
ありがたく頂戴する。
「付き合っていた、健康に恵まれていたはずの晃志も、
父親の暴力と母親への愛情不信から
心に傷があって、
17歳の私は、
2人の間で揺れていたの」
………17歳、
今の私と同じだ。
DVや事件のことはネット記事で読んで知っていたけど。
「心の傷は、時には人を暴力的にするから…」
……だからといって、剛の"闇"を理解しようとするほど
私は寛大じゃない。
「晃志さんが死んでから晃大くんのお父
さんと 付き合いだしたんですか?」
カラカラのくせに質問せずには居られない。
そっくりな双子を愛するなんて
そんなによくある話じゃない。
「晃志がバイク事故で死んでから、
わたしは、
……抜け殻だった。」
………愛する人が、
「だけど、十年たって
変わらず絵を描き続けていた晃大に再会して
わたしは、再び命をもらったの」
2人とも先立って逝ってしまうなんて
__……こんなに悲しいこと他にない。
「話が逸れてゴメンね
警察には、
サクラさんとよく話してから、届けた方がいいと思うわ」
「はい………」
美咲さんは、強い人だと思った……。
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