複数愛

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サクラちゃんを自宅近くまで送り、また戻って自宅に帰ると 夜の八時近くになってしまった。 「光?、遅かったね」 母さんも、さっき帰ってきたようだ。 「うん、サクラちゃんを送ってきた。」 急いで夕飯を用意する母さんは、 「そう」とだけ返事をして忙しそう。 キッチンに飾ってある桜の絵が 俺の描く桜と違い、とても鮮やかに見えて、自分は父さんや母さんほどは才能ないんだな、と思った。 「警察に行ってきたよ」 俺も上着を脱ぎ、野菜の下準備を手伝う。 「……サクラさん大丈夫?」 「うん、気丈に当時のこと話してたよ。」 野菜を切るのは小さい時から好きだった。 「………舞さんは?」 「え?」 「舞さんも被害にあったでしょ?」 おれは、 母さんに、聞いてみたい事があったんだ。 「……あのこは、感情が激しいけど 強いから大丈夫だよ。」 「………表面しか見えてないと、 素晴らしい絵は描けないわよ。」 「…………」 父さんが描いた、若い時の母は、 晃志おじさんを、愛してる証の涙を流していた。 「母さんは、 2人を同時に好きになって、 どうやって、選んだの?」 複数の愛が入り混じっ た悲しい絵の過程は、 母さんを幸せにしたんだろうか?
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