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「始め、晃志おじさんと付き合ってたのにあんな絵を、父さんに描かせることができたのは、
父さんの事も好きだったからじゃないの?」
俺は、今更知って、どうかなることはない質問を、
母さんにぶつけた。
責めたかったわけじゃない。
「光……迷ってるの?」
母さんは、料理をする手を止めて俺の顔を見つめた。
「………俺、
初めて舞ちゃんに会ったとき、
女の子なのに勇気と度胸のある彼女に惹かれたんだ。」
剛たちのカツアゲと暴力。
俺より先に、その中に飛び込もうとした彼女……
人として、信用できる子だと、仲良くなりたいと思った。
「確かに、飾らない素敵な女の子よね。」
" だけど………"
俺は頷いて、
沸騰した鍋に まな板から切った野菜をスライドさせてぶっ込んだ。
「剛にひどい目にあって、独りで抱え込もうとしてたサクラちゃんが、
可憐な散りそうな花びらみたいで………
気になって
気になって
支えてあげたい、って思うようになって……」
ポトフを仕込みながら 言葉が詰まってしまって
俺は、また
桜の木の絵を見た。
「なんで、双子なんだろう?」
どちらも傷つけたくはない。
母さんも、こん な気持ちになったんじゃないかと、
聞いてみたくなったんだ。
「人の心は、変わっていくから……」
母さんは双子の兄弟の愛の中で、
「この桜の木を描いた時は誰を好きだったの?」
沢山の喜びも、
悲しみも
時間をかけて
今の母さんが放つ、
幸せなオーラを作ったんだと
「勿論、あなたのお父さんよ」
そう信じたくて
聞いてみたくなったんだ。
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