複数愛

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「さくら、どうして黙ってたの?」 舞と自宅に帰ると お母さんとお父さんが 悲しそうな顔をして私達を待っていた。 「警察から電話があったあと、母さん取り乱して大変だったんだぞ」 お父さんはいつもより随分早い帰宅だ。 「ごめんなさい……」 みんなに心配かけた。 「サクラ、ほんとに被害届だすの?」 家族は、世間の見る目も心配する。 私も、そうだった。 食卓には、スーパーから買ってきたお惣菜が並んでいる。 お母さんの余裕の無さがわかる。 「出すよ……舞だって 危ない目にあったんだもん、 泣き寝入りは奴の思うツボだし……」 剛の存在を、今日初めて知ったであろう両親は、 「八つ裂きにしてやりたい」 悔しそうに 涙を浮かべていた。 これを一番見たくなかったんだ。 親が泣く姿なんて…… 「お腹へった!」 舞がいきなり大きな声をだして 炊飯器のごはんをよそおい始める。 「こんな時に、よく腹が減るな…」 お父さんは 呆れた顔で舞を見ているけど、 「大変なのは、これからじゃないの、 ちゃんと食べないと、裁判には挑めないよ!」 警察署では泣いていたのに、 家の 中 が、少しでも、 暗くならないように振る舞う彼女が、 …………頼もしくて 「サクラも食べないと生理止まっちゃうよ」 「お父さんの前で言わないでくれる?」 舞が妹で良かったなって、心からそう思った。
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