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「 光…遅いわね」
近所のクリーニング店に行ったはずの光くん。
お礼を行ってから帰ろうと思っていた。
「晃大さんの絵、また観せてもらってもいいですか?」
わたしは、また 心を揺さぶられる絵たちに会いたくなってしまった。
「……どうぞ」
アトリエの真ん中に、
相変わらず堂々と存在感を示す圧倒的な
" 悲しみの絵 "
裸体の胸に力強くとまる赤いアゲハチョウ。
『青虫も、いつか綺麗な蝶になる。』
あの、桜の管理人気取りの少年がそう言っていた。
そう思えば 蝶の命なんて、短いものだよね。
わたしは、再び【光】というタイトルの、
亡くなった"晃志"の、美しい安らかな眠りを描いた絵の前から
動けなくなった。
生まれた時からずっと一緒だった双子の兄弟が、
突然、いなくなってしまったら
どうやって立ち直って生きていくんだろう?
ましてや
その兄の心臓を移植されて 命を延長してしまったら………
「…………」
わたしは、自分の心臓部分を押さえて、
止まることのない躍動的な生命力に
ひたすら有り難さを感じて………____
私たちが生まれる前の、
確かに存在していた、儚い双子の命の 話を、
一生、覚えていようと思った。
さくらは唯一の私の姉妹。
命がけで守らなきゃと思った。
傷つけられた身体も
" 心 "も____
「舞ちゃん」
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