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「母さん、日曜日に舞ちゃんとサクラちゃんが遊びに来るよ。」
父さんの個展が終わり、
絵の回収や購入者とのアフターなど
ちょっと忙しそうな母さんは、
それでも嬉しそうに返事をした。
「2人仲良いんだね、安心した。」
「…………うん」
俺は、
自分の気持ちがよく分からなくなってきていた。
「どの絵が売れたの?」
父さんが残してくれた、遺族のための売却用の絵画たち。
「季節を表した田舎の風景画ばかりよ。」
そんな絵も俺は全部大好きだ。
できたら
手元に置いておきたい。
「俺、医者になるの諦めて、高卒で働こうかな…」
生活には困ってないけど時々、現実的に考えてしまう。
舞ちゃんは、
頑張って心臓病の医者になれと言ってくれたのに。
「お母さん、また働きだすから、光はあまり考えすぎないで」
母さんは、庭にでて、初夏の花たちの手入れをし始めた。
「………絵は描かないの?」
父さんが亡くなってから
泣いていない時の母は、いつも絵を無心に描いていた。
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