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「彼氏…?」
エンジンを切った車から剛が先に降りて、
まず私を外に出した。
「光くん、ここにいるの?」
確かにここなら、人目につかないかもしれない。
私は真っ先に廃屋に向かって走り出した。
「バァカ!」
____走り出したけど…
「あんな爺ちゃんのお化けが出そうな家に、誰が死体隠すかよ!」
直ぐに剛に腕をとられる。
「……死体…?」
今、
死体って言った?
「光くんを、殺したの……?」
私の腕を掴んだ剛は、半分開かない片目も、大きく見開き、
「半殺しで埋めたけど、
もう、死んでんじゃねえ?」
とても
嬉しそうに笑い出した。
車の中から、サクラの泣く声が聞こえた。
「光くん!!!」
私は掴まれた腕を振り解いて、夜の畑へ駆け出した。
「光くん!!返事して!」
荒れ果て、自分の身長くらいある雑草が生い茂り、
どこに、そんな場所があるのか、
なかなか目をつけられない。
「光くん!!」
ただ、
名前を呼ぶしかできない。
「光くん…」
絶望的な状況でも、
諦めない事を願ったような、
素敵な名前……
「返事をしてっ!!」
私とサクラの、
好きな人の名前 ………………。…………
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