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「晃志くんは、晃大くんの中でいきているんだよ」
晃志と乗ったバイクが交通事故にあって
私だけが生き残った。
「……晃志…死んだんですか?」
危篤状態に陥った晃大の病院に向かう途中だった。
「晃志くんは脳死だったんだ。」
大怪我した私の車椅子を押しながら
医師は
静かに、初恋の人の死を私に告げた。
晃志の心臓は、
移植手術を待っていた晃大の胸の中で生かされた。
信じられなくて
心が死んだ17歳の私。
あの時の私と同じ年になった、晃大との唯一の結晶、光が
なんの因果が双子の女の子に出会い、
恋心を抱き、悩み、
今生死をさまよっているかもしれない。
「さっき、本郷剛の亡くなった祖父の家で
騒いでいる若者がいると通報があったようです。」
覆面パトカーに乗り込んだ私に、刑事が報告し、反対に向かっていた車をサイレンを鳴らしながら
山のほうへ向かわせた。
「で、君は?光くんの友人かい?」
刑事がミラー越し、音無くんに声をかける。
「あー………いや、恋人候補です…」
「双子の?」
「…美咲さんのです。」
面白いけど笑えないまま
私は、ひたすら山林の闇を見なが ら 祈り続ける。
光も、
双子のどちらも
死んではダメ…………
あのときの悲しみを
もう誰も味わってはいけない。
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