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鬼のような、澱んだ心で人を恐怖の底に突き落とす、
サクラから身体だけでなく、恋への希望も奪った男…____
その剛に、
「キスして」
サクラは
縛られた手を剛の首にかけるように、
恋人同士のようなお願いをしている。
「はっ……なに急にその気になって……」
サクラに異常な愛を向ける剛が悪い気するはずがなく、
剛は、
サクラにキスをする。
「ほら、姉ちゃんがやる気になってんだから、お前もおとなしくしろよっ」
土の匂いにまみれながら、必死にモヒカンの顔から逃れようとしていた、
私の腕が
急に広範囲に渡って動けるようになった。
「…………」
剛が、持っていた紐を手放して
サクラを抱きしめていたからだ。
私は思い切り両手で、モヒカンの鼻を、
ついでに両足で、
やつの股間に衝撃を与えた。
「っ!!!」
もちろん、致命傷にはならない。
私はモヒカンの下からすり抜け、
地面から走り幅飛びでもするように、
光くんが埋められているはずの場所へ一足で向かい、
暗闇に光るスコップを両手で持った。
サクラの気持ちに応えなければ、
私は
「おいっ!サクラ、俺の首から腕離せ っ!」
" 初めて"は好きな人としたい。
だって、
可愛くない女にだって、それくらいの権利はあるでしょう?
私は
大きなスコップを、
立ち上がろうとしたモヒカンめがけて
振り下ろした。
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