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「親戚から『お前、今、暇だろう? 仕事を手伝ってくれないか?』って誘われてね。外車専門の中古車ディーラーなんですけど、通えるような距離じゃなくて。俺、そこで専務として働くことになったんで、引っ越すことにしたんです」
このオッサン、場末のバーテンダーとして働いていたらしい。それも”用心棒”を兼任しているバーテンダーだ。言われてみれば、歳をとってしまったとはいえ、体格はがっちりとしていて腕も太い。大きな顔には凄味もあった。
「で、いよいよ明日で引っ越すってなった夜にね。とうとう姿を現したんですよ」
「え? 姿って……幽霊、が?」
僕はごくりと喉を鳴らした。このごついオッサンを10年間も苦しめてきた幽霊が、ついにその姿を見せるのだ。どんな幽霊だったのか、きっと僕でなくとも気になるだろう。
「ど、どんな幽霊だったんです?」
「いやぁ。それがね……」
オッサンは照れ臭そうに、そして少し躊躇ってから語り出した。
「いや、峯さんなら信じてくれると思うから話すけど。その幽霊ね。実は、女だったんですよ。30半ばくらいの」
「へぇ。いや、もちろん信じますけど。そういう幽霊なら、わりと定番なんじゃないですか?」
なぜ照れたのだろう? 僕はそれが腑に落ちなかった。
が、この後の展開を聞いて納得した。
こんな話、なかなか信じる人はいないだろう。姿を現した幽霊のとった行動は、誰にも予想出来ないようなもののはずだ。
まぁ、エロ要素が強すぎて、怪談と言えるのかどうかは疑問視してしまうことになったけど。
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