ラブライフ!

6/6
前へ
/6ページ
次へ
「でも、その部屋は最初から出るって言われていたんでしょう?」 「ああ、だから多分、それとは違う幽霊だって。もともといた幽霊は、エロ幽霊に追い出されたんじゃないかって」  霊界も弱肉強食なのだろうか? 居場所は自分の力で確保するものであるらしい。 「ふられたショックからか、その幽霊、もう成仏してますよ」  霊媒師はそう断言して笑ったそうだ。 「まぁ、成仏できたのなら良かったですよね」  オッサンが、がははと笑う。 「でも、10年も一緒に住んでいたんでしょ? いなくなったら寂しくなったりとか、情が移ったりとかしてなかったんですか?」  僕の脳はラノベ脳だ。ついこんな想像までしてしまい、確認してみたくなる。 「はー? あー、まぁ、ちょっとはあったかも知れませんねぇ。別にもう一度会いたいとは思いませんけど」 「ですよねー」  現実にはこんなもんだ。これが当然の反応だろう。  このオッサンは僕の会社にシルバー人材派遣会社から派遣されている。僕は正社員であり、この60代後半のオッサンは派遣社員。だからお互い敬語でやりとりをしているけど。  やはり、この年代のオッサンたちの話は面白い。人生に深みがある。とんでもない修羅場をも潜り抜けてきているのだから。 「あ。この話は内緒ですよ、峯さん。他の人に聞かれたら、俺、頭オカシイって噂になるでしょうからね」 「はは。分かってます」  口に人差し指を当て、ウィンクしてみせる皺深いオッサンが、僕にはやけに眩しく見えていた。                                             ~END~
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加