最終章 薄明

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ワインのスクリューキャップを開け備え付けのグラスに注いだ。 「なんか… グラスが味気ないね」 「しゃーないよ 100均で買ってくればよかったか?」 「ううん でも量の加減が判らなくて 飲み過ぎそう」 レンジで温めたパイは触感はなくなっていたが、 バターのいいかおりが漂っていた。 「美味そうな匂いだな」 「食べよう! いただきます」 「ワインも当たりだ! 値段の割に美味いよ」 「夏休み いつからだっけ?」 「12から22日まで」 「10日間かぁ  旅行  行くわけないか!」 「お前と行けたらいいんだけどなぁ」 「今年はしょうがないよ 来年もあるって」 「実家に帰るのか?」 「うん 先生は?」 「俺も… 今年は法事もあって 姉も帰ってくるし」 「じゃあ お父様の家に?」 「気が重いけどな」 「離婚のことは…」 「話してる 別居した時点で話したよ 親父たちも離婚しないでやっていくのか気になっていたようだし」 「じゃあ…」 「不仲っていうことは もう とうの昔に知れてたことだ 航も母親とうまくいってなかったから 祖母さんの所に行くことも多くてさ 」 「そうだったんだ 私も帰ったら ちゃんと話してくる 後は絵里が帰ってくるから 会う約束してるぐらいかな」
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