🌱🌱🌱第一章🌱🌱🌱

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「私を、貴方の恋人にする気はない?」 涼やかに、彼女はとんでもないことを言う。 だが俺はもう、何を言われてもそんなに驚かない。 「恋人? 何でまた」 「昨日の貴方と赤穂君の会話を聞いていたんだけど、貴方怪しまれてるじゃない」 「何が」 「貴方が恋人を作らないことをよ」 ……なんだか盗聴された気分だ。 確かにツカの席は綾ヶ崎の二つ前だ。今までこんな女、気にもかけていなかった。 彼女の言うように、俺はツカに怪しまれている。 昨日の休み時間の会話はこんな感じだ。 「そういやさ、イッキって彼女作らないよな」 ツカは最初そう言った。俺は彼にだけ、“イッキ”と呼ばれている。それは六歳から変わらない。そう、俺達は変わらない。 「別に、あんまり興味ないし」 「結構モテるじゃん、イッキ」 「ブスばっかよ?」 「酷いなそれ。まじで童貞卒業した方がいいって!この夏にでもさ」 馬鹿じゃねーの。 そんな可愛い顔で何言ってんだ。 「別にいいって。それなりにいい女見つけてヤるから」 「うっわ。最悪、ヤリチンか」 整った綺麗な顔が、くしゃりと崩れる。笑った。くそ、可愛過ぎる。 「もしかしてお前、ホモ?」 冗談混じりに、あいつは訊いた。 「……アホか。んな訳ねーだろ」 「だよなあ」 「男より女の方がいいだろ、好きになるなら」 本当に心からそう思う。 「確かにねぇ。まあそういうジャンルの人間もいるんだろうけど、俺には分かんないわー……んじゃあさ、イッキがもしホモだったら、上か下どっちしたい?」 何言ってんだ馬鹿。 「知らねーよ。考えたくもない」 「俺がホモだったら絶対上だね。女役とか考えられない」 ……と、ツカは言っていた。 すまん、ツカ。俺は毎晩夢の中で、お前をガスガス犯してる。 と、静かに、胸中で謝ったのを覚えている。
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