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「このままずっと恋人を作らないつもり? 俺はなんて一途なんだって自惚れて、赤穂君の結婚式でスピーチでもするつもり?」
「話が先に行き過ぎだ。第一そんなキャラじゃない。辛くなったらあいつから離れて独身生活を満喫するさ。お前に心配して貰わなくても結構だ」
「どうしても、駄目なの?」
「駄目だ」
すると彼女は、あの意味深な笑みをたたえると、くるりと背を向けた。
「だったら仕方がないわね。学校中に貴方が赤穂君のことを好きだってこと、広めなくちゃ」
「……は?」
「貴方はこの高校に居られなくなるわ」
「ちょっと待てよ。お前脅さないって言ったよな?」
「気が変わったのよ。貴方が言うことを聞かないから」
「……最悪だな」
「私と夏休み、逢ってくれるだけでいいの。勿論、赤穂君にも紹介してね」
「お前、本当に俺が好きなのか」
「好きよ。多分」
「だからその多分って何なんだ」
「空が青いわ。綺麗」
窓辺に駆け寄って、綾ヶ崎は呟いた。
汗が、気持ち悪い。
蝉の声は相変わらず、うるさい。
そうして俺は、綾ヶ崎茜とうわべだけの交際を開始することになった。
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