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あいつは黒のパーカーに、だぼっとしたブラウンのズボンというスタイルで登場した。
綾ヶ崎はというと……
如何にも清楚そうな、真っ白いワンピース。幼稚園児が着てそうな。恥ずかしくないのか。
この辺りはあまり街ではない。電車に乗らなければ、繁華街には行けない。今日は繁華街に向かう予定はない為、待ち合わせ場所は、図書館の前の広場だった。
「……イッキ。どうしたの? 何で綾ヶ崎さんが居るの?」
ツカは呆然として質問した。
そりゃびっくりするだろうな。
「紹介してちょうだい、設楽君」
澄まし顔で、彼女は俺を肘で小突く。
「悪いな、ツカ。俺、こいつと付き合ってんだよ。ずっと秘密にしてたけどさ」
嘘だよ、付き合う訳ねーだろ。その言葉を、俺は必死で呑み込んだ。
イッキは“唖然”という感じで、口を半開きにしている。綺麗なピンク色の唇。やべえ、くそ、ちゅーしたい。
「まじで……? イッキ興味ないって言ってたじゃん。いや、まあ、綾ヶ崎さん美人だけどさー……凄い意外」
「だろうな」
「いや、でも、うん、似合ってると思うよ。美男美女でさ」
ツカの喋り方が、いつもと違った。
「何、お前動揺してんの?」
「いや、するだろ! しかも今日二人で図書館で勉強って言ってたろ!」
「嫉妬?」
「ちげーわ馬鹿! あ、ごめんね綾ヶ崎さん。別に綾ヶ崎さんが邪魔って訳じゃないよ? ちょっとびっくりしただけで」
優しい声で綾ヶ崎に語り掛けるツカを見て、不覚にも俺が嫉妬してしまった。
「別に、気にしてないわ」
彼女は凛とした声で返答すると、さっさと図書館へと入って行く。
「……どっちから?」
ツカが俺の耳元に囁いた。
「あっちから」
「好きなの?」
「……好きだよ。多分」
綾ヶ崎の真似をしてみた。
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