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幼馴染みで親友の赤穂司ことツカは、既に帰ったらしい。
あいつはダチを待ってるような健気な奴じゃない。これっぽっちも期待などはしていない。
教室の隅で黙々と読書をする彼女は……ええと、なんて名前だっけ。
ただでさえ色が白い、透き通ってしまいそうなほどに白い彼女の存在は、非常に希薄だ。
肌の色と相反して、真っ黒く長い髪が、彼女の顔に影を作っている。
まあ俺は、こいつの顔になんか興味ないし、ましてやこいつの存在自体に興味がある訳もない。
名前など思い出さなくたって支障は出ない。
俺は自分の席へと向かい、鞄を持ってさっさと教室を出ようとした。
ええと、まずは、帰ってからゲームして、昼飯食って、昼寝して、それから……
――ミーンミーン
ああ、蝉の声がうるさい。
「……ねぇ、貴方って本当に健気よね」
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