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「……な、に、言ってんだよ」
我ながら情けない声が出た。泣き出してしまいそうだった。自分でも分かるほど声は震えていた。
綾ヶ崎は、笑みを消して、今度は酷く心配そうな、不憫そうな表情をした。
「……ああ、ごめんなさい。脅すつもりは全然ないの。ただ、知りたくて」
ぱたりと本を閉じて、彼女は淡々と言う。ただ知りたくて?
ただ知りたくてそんなことを訊いたのか?人の気持ちも考えずに?
それよりも
「何で、知ってるんだよ」
俺の疑問はそれだけだ。
「何でって、貴方を見てたから」
表情を消して、ロボットみたいに綾ヶ崎は言葉を繋いだ。
「見てたって何で」
「好きだからよ」
「好き?」
「そう。私、貴方のことが好きなの。多分」
……多分?
何言ってるんだこの女。意味が分からん。
「……それは告白か?」
「一応ね。でも返事なんて要らない。私、眺めるのが好きなのよ、人間をね」
「お前はつまり、俺のことが好きで俺を眺めていて、俺があいつのことを好きだって気付いた訳か?」
「簡潔に言えばね」
汗が、首筋を伝う。
気持ち悪い。俺はその雫を素早く拭った。
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