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「……そら、さんの髪」
「ああ、斬れた」
「……どうして、ここに」
兄貴が捨てた。
目の前にする苛立ちを恋と気づかないまま捨てた女。
「助けにきた。いや、連れ戻しにきた」
「……え?」
「颯太。こいつは俺のガキだろう?」
兄貴そっくりな顔の颯太に初めて触れ抱き上げると、彼女―――知里の眼差しが揺れた。
「……違う、わ」
「じゃあ、颯太は誰のガキだ?」
「……それは」
知里が言い淀む。
手切れ金を投げつけて別れてその後すぐに身籠ったという言い訳があまりにも苦しすぎる。
「知里。颯太は俺のガキだろう?なんで黙ってた?」
兄貴がその後に必死で探し回ったことを知らない知里は答えられなかった。
「おまえの部屋でこれを見つけた」
「あ、……これは、違うの」
「何が違う?おまえと颯太が写ってた写真の下にあった」
「……これはたまたま、」
「じゃ、颯太が俺にそっくりなのは?」
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