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村の中を、歩いていた。
金属を金属で叩く音が響いている。
それは、鎚を打ち付ける音だと彼は気付いた。
ここは、『火の村』。
それを、彼はようやく思い出した。
鍛冶屋たちの村である。
年がら年中武器と防具の製造がされている、ホルン王国の武器庫のような村。
うるさいとは思わなかった。
全ての感覚が、鈍くなっている。
緩やかに死へと向かっている。
宿に寄る前に、村の中央へ足を運んだ。
村で一番大きい建物になるだろう。
老朽化が進んだ建物だった。
村人の話では、孤児院ということだ。
特別な用事があったわけではない。
ただ、彼は変化を探していた。
当てのない探索である。
少しでも気になることがあれば、とにかく訪れた。
庭を駆け回っている子供たちがいる。
だが、ある場所にだけは近寄ろうとしていなかった。
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