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孤児院を取り囲む、低い塀。
その近くに生えている太い木の根元に、二人の少年がいた。
一人は本を読み、一人は寝そべり、日の光を浴びている。
彼は、眼を見開いた。
制御法を知らないのか、少年たちの体から垂れ流しになっている魔力。
鎚を打つ音。
それに合わせ、無意識の内に名前を呟いていた。
昔から、人の名前と顔だけは、瞬時に覚えられる。
彼は、それを自分の唯一の特技だと思っていた。
呟くのは、これまでの人生で出会い、別れていった者たちの名前。
死んでいった、仲間たちの名前。
(……みんな、ようやく、見つけたよ)
それは、勘ではない。
そんな生易しいものではない。
永い永い時を生き、多くの地獄を見てきた彼にある、経験。
それが、告げているのだ。
ここに、原石が二つある。
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