1-2「異世界、セルデシア」

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 「よし、今のうちに………!」  足を引きずりながら、僕は森から脱出しようとした。  しかし、世界はそんなに甘くないようで、またしても僕に試練を与えてきた。  「グルルル……!」  「で、でっかい……イノシシ……!?」  道をふさいでいたのは、遠くて大きさはわからないが、ここから見ただけでもかなりでかい。二メートル以上はありそうな巨大なイノシシだった。鼻息が荒く、漂う体臭は思わず鼻をつまみたくなった。  「ブモォォォ!!」  「っ!?うるさ………!」  凄まじい音の声と同時にイノシシが僕目掛けて木々を倒しながら突進してきた。しかも、あの巨体のせいで逃げ道なんでどこにもない。  さっきのブライアウィーゼルたちも拘束していた光のツタが消えると一目散に逃げていた。  あぁ、神様。もし本当にいるのだったら今すぐ僕を助けてください。もうピーマンもグリーンピースもちゃんと残さず食べますから。どうか、お願いします……!  「ブモォォォ!!!」  イノシシはなおも止まらず真っ直ぐ僕に向かって突進してくる。  ……やっぱ、野菜食べるだけじゃ助けてくれないか。  今度こそ本当にダメかもしれないと思ったとき、恐怖で視野が狭まっていた僕に、一筋の光が見えた。  「あ、あれって、滝……?」  巨大なイノシシの突進のおかげで木々がなくなり、そこからゴゥゴゥと音を鳴らしながら滝が流れているのが見えた。  ここで僕は普段なら絶対に思いつかないでような考えが頭に浮かんだ。  「…………もう、これしかない!」  突っ込んでくるイノシシを無視し、僕は恐怖を払い除け思いっきり横に飛んだ。  その時に、木の枝に引っかかり腕を切ったけど、痛みは感じない。今はもう目の前にある光景にしか神経がむいていなかった。  そこから見える光景、それは――――――  「崖から落ちるのって思ったより恐いんだけどぉぉぉーっ!!」  ――――――それは、上流からゴゥゴゥと流れる滝の先に広がっている、崖の下の川の光景だった。  僕からみると地獄へと誘う悪魔の招く手に見えたけど。
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