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キーンコーンカーンコーン
「終わったぁぁー!」
チャイムが鳴り、勢いよく木のドアを開け走っていったのは、ツンツン頭の眼光がするどい少年だった。
「ちょっ!待ってよ、冬弥!」
「置いてかないでよ葵ちゃんー!」
それに続くように一本だけピョコンと伸びているアホ毛が特徴の幼い顔立ちの少年と、長身の能天気そうな少年が教室を飛び出した。
「おい、三ッ峰!僕の名前にちゃんをつけるなってあれほどいってるだろ!」
「え~?葵ちゃんは葵ちゃんでしょ?」
「そうだぞ~。可愛くていいじゃないか。葵ちゃん?」
「冬弥、お前面白がってるよね!?」
冬弥と呼ばれる少年は、そんなことないぞ、と言いながらへらへらと笑っている。
「それよりも早く帰ろうぜ。今日は待ちに待ったオンラインゲーム、エルダーテイルが正式にできるようになったんだろ?」
「ああ、そういえばそうだったけ?完全に忘れてた」
「葵……。元はといえばお前が俺たちに勧めてきたんだから覚えておけよ……」
葵はバツが悪そうにあははと言いながらごまかす。
冬弥の言っている<エルダーテイル>とは、20年以上続く大人気のMMORPGである。
今年で25周年になるこのゲーム。それに合わせての宣伝も大々的に行っており、葵はそれを見つけて二人にも勧めたらしい。
「よし!そうと決まれば早く家に行こう!二人共、あとで通話しながらやるから、僕が連絡するまで始めないでね!」
「あ、おい!」
葵は一目散に走って行き、あっという間に見えなくなった。
「葵ちゃん、元気だね~。俺たちも行こうか。冬弥」
「ああ、そうだな。ったく、自分勝手に行動しやがって、こっちの身にもなれってんだ」
「まぁまぁ、それが葵ちゃんのいいところだし」
そんなことを言いながら2人も自分たちの家に向かった。
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