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女が夜道を歩いていた。
女とは言っても、まだ大学生くらいの彼女は、短いスカートからすらりと伸びた白い足をリズミカルに動かしている。
右手に下げているのは、ブランド物の鞄。
そして左手には携帯電話を握りしめて、耳に押し付けている。
液晶画面からもれる光が彼女の長いまつ毛を照らしていた。
「まだ、あいつと付き合ってるの?」
携帯電話から響いてくる声は、おもしろがる様子を隠しもせずに問う。
女の唇が、不機嫌そうに尖った。
「まあ……付き合ってるのかどうかは分かんないけど、会ってはいるよ」
「分かんないってなによ」
と言う声の主に見えるはずはなかったけれど、女は肩をすくめた。
「だって、好きとか、付き合おうとか言われてないもん」
それに対して、相手は何事か言いかけた。
が、女はそれを遮るようにして
「それよりさ、この前の話だけど。ほら、あんただったでしょ。
占いをしてもらったって言ってたの」
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