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「ありがとう。あと、隣に彼の名前と誕生日も書いてちょうだい」
言いながら、紫苑は催促するように私を見た。
彼女と目が合うまで、私はすっかり、やるべきことをし忘れていた。
慌てて、先ほどと同じ要領で糸を選び出すと、右手と左手に持った糸を、慎重に結ぶ。
が、残念なことに、今度はすぐにほどけてしまい、うまくいかなかった。
チラリと少女の顔を見れば、自然と手が動いてしまって、何度か試してみる。
が、何度やってもダメなものはダメで、磁力で弾きあってでもいるように糸は互いを引きはがそうともがいた。
「どうやら、相性がよくないようね」
紫苑は首を横に振る私を見た後、淡々と言った。
すると驚いたことに少女は椅子をひっくり返して立ち上がったのである。
「嘘!」
それから、紫苑が書き込んだ紙をつかみ取ると、それを食い入るような目つきで睨んだ。
それ見て……意味わかるの?
私はぼんやりと思ったが、少女はそれどころではないらしい。
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