真朱の赤い糸

第四章

どうにかしてやれるものなら、私にだってしてあげたい。

でも、できないのだ。

こういう時には、糸が見える能力なんかよりも、いんちきな紫苑の占いのほうが余程役に立つ。

紫苑は表に、数字を書き込んで、いくつか線を引きながら指し示した。

「あなたは、どうしても彼じゃなくちゃいけないって思っているみたいだけど……彼以外にだって、男はたくさんいるんだから、視野を広げてみなくっちゃ。
たとえば、そうね。オレンジ色を身につけると、いろいろな人との出会いが増えるわ。
そういうことを、きっかけにして……少しずつ前に進んでみるしかない」

紫苑は立ち上がると、心細そうにしている少女の背中を力強く叩いた。

その言葉が彼女に届いたのかどうかは分からない。

それでも、力に押されて揺さぶられた少女は、思いがけずしっかりとした足取りで店を出ていった。

私は、少女の姿が見えなくなってもまだ、窓から目が離せなかった。

彼女の気分を、そのまま映したかのような暗雲が、空いっぱいに広がっている。

今にも雨粒が落ちてきそうな黒い雲を眺めながら、私はふと、誰にも見えないところで少女がまた泣いていないか心配になった。