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少女の次に待っている客がいなかったことは、幸いだった。
すっかり疲れ果ててしまった私は、立ち上がることさえできずにいたのである。
先に動いたのは紫苑だった。
「辛いだろうねえ……」
分かる分かるというふうに彼女は言って、ビリビリに破かれた紙を集めだした。
「私には、分かんない」
小さく呟いて、私は自分の手を、じっと見つめた。
糸のない私に、特定の人と結ばれない悲しみなんて分かるわけがない。
そこまで考えて、気が付いてしまった。
たとえ糸があったとしても、それを結びたい相手もいないのでは、なんの意味もない。
悲しんでいた少女よりも、悲しむことさえできない私のほうが不幸なんじゃないかとさえ思えてきて、気分が滅入ってしまった。
思いつめてしまうほど好きな人がいるというのは、きっと素敵なことだ。
本人は苦しいばかりで、分かってはいないだろうけど、きっと、いつか分かる日がくる。
そしてその時は、悩み苦しんでいた過去の自分を笑ってやれるのだろう。
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