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私は、その表や数字が何を意味するのか知らない。
ただ私は、椅子に腰かけたまま、ぼんやりと女の子を眺めていた。
女の子は私には目もくれずに、じっと表を睨みつけている。
私が指をゆっくりと動かしていることなど、何の興味もないようだった。
女の子の左手、小指に結ばれた赤い糸。
その細くて、今にも切れてしまいそうな糸を、私は指を滑らせて、慎重にたどっていく。
「そうね。あなたは、この人と今まで話したことも、ほとんどないんじゃないかしら」
「そうなんです。同じ学校の先輩なんですけど、女の子にも人気があるから、とても話しかけられなくて……」
どこまでも、どこまでも続く糸を手繰り寄せて、私は軽く目を閉じる。
それから、うっすらと目を開けて紫苑に顔を向けると、小さく横に首を振った。
紫苑は確認するように、ひとつ瞬きをすると、女の子に言った。
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