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「あなたが待っているだけでは、この人のほうから話しかけてくることはないでしょうね」
がっくりと肩を落とす女の子。
しかし紫苑は安心させるように、うなずいてみせた。
表の上を滑る彼女の手は、驚くほど白く、青い筋が何本も浮き出ているのが、よく見える。
年齢不詳。それは紫苑のために作られたんじゃないかと思うほど、彼女によく似合う言葉だと、私は思う。
40歳は過ぎているはずなのに、肌は透き通るように白く綺麗なままで、髪には艶がある。
「正直に言って、この人との相性はよくないわ」
と、紫苑は言って、表に数字を書き加えた。
極端に右肩上がりの癖のある字。
それが呪文のように、つらつらと並べられていく。
「でも、来月か再来月には、ほかに気になる人が出てくるかもしれない」
「本当ですか?」
「ええ。あなたが、よく周りを見ていれば、気が付くでしょうね。
この人のほうが、相性は良いはずよ」
と、励ましの言葉が続く。
私は、すっかり興味がなくなってしまって、女の子から窓の外へ視線をうつした。
最近は客も増え、外で人が待っていることも多い。
今も1組のカップルが、何事か囁きあいながら、時折中を覗き込むようにして順番を待っている。
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