《14》

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俺に彼女を責めたり、笑ったりする資格はない。 「辛いよね………それに、すっごく苦しいし………痛いんだよね、胸が…」 「………今も、ズキズキと痛みます…」 この痛みには、どんな特効薬も効かないと思う。 時間の経過という、遅効性の薬以外は。 医者も匙を投げるだろう心の病を憂いていると、女の子が「あの………」と、声を発した。 「ハナ、って………誰ですか?」 「っ、」 不意打ち的に振られた相手の名を聞いて驚いたと共に、何でその名を知ってるの?と疑問が生じた。 「な、何でその名前………」 狼狽える俺に、彼女は困ったように眉を下げながら言う。 「田嶋さん………昨日の夜、ずっと私の事をその名前で呼んでましたから…」 「そ、そうなの……?」 「はい。ハナ、大丈夫?ハナ、怖くない?って…… そんな感じで」 「う、わ~…」 顔から火が出たような気がした。
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