《14》

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まだ現在進行形で直井さんが好きだ。 もし彼女が「やっぱり、田嶋さんと付き合います」なんて言って来たりしたら、俺はきっと両手を広げて迎え入れてしまうと思う。 そのまま抱き締めて、キスして、また抱き締めて……… いつか二人で観に行った映画みたいに「もう離さない……」とか言ってしまうかもしれない。 「………私も同じです」 「ん?」 痛々しい位にぎこちなく笑う彼女は、儚げな空気を纏いながら言う。 「私も田嶋さんと一緒です。当分、過去形には出来そうにないです」 薄く涙が滲む目。 それにつられて、こっちまで視界が滲んできた。 一度でも瞬きをしたら、目から滴り落ち、毛布を濡らしてしまいそうで…… 無駄な抵抗として、天井を仰いでみた。 涙が零れ落ちないように。
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