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「…………」
「………」
お通夜のような、しんみりと暗く、重い空気が流れる。
俺が今居る部屋は線路に近いのか、時折電車が通過する音が聞こえてくる。
ガタン、ガタタン……と、リズミカルな音を刻んで。
三本の電車の通過音を聞き終わった頃、お互いにもう語る事もないだろうと判断して、俺はベッドから降りようとした。
すると…
「あ………待って下さい」
床に足を着ける寸前で動きを止められた。
「………一つ、提案があるんですが…」
そう切り出した彼女は、俺の手に自身の手を重ねる。
そして、声、重ねた手、華奢な肩………全てを小刻みに震わせながら言う。
「………もし良ければ……キズの舐め合い、しませんか?」
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