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直井さんは、どこか決まり悪そうに頷いた。
「……今は、羽鳥と名乗ってます」
「…………そっか…」
直井姓から、羽鳥という姓に変わったと言う彼女。
結婚して名字が変わっても、俺の中では、直井さんは直井さんのまま。
負け惜しみって訳じゃないけど、聞き慣れない名字よりも、彼女は直井姓の方が似合っている気がする。
あくまでも、認めたくない訳じゃないけど。
「我が家も次男にせがまれて来てみたのですが、あまりにも人が多くて……主人に任せてこの子と退散してきた所です」
彼女は、抱いている女の子をいとおしそうに見詰めた。
「そっか、中の方はもっと人凄いんだ……ウチはわざと開場より遅らせたんだけど、結局意味なかったみたい。駐車場なくて車停めるのやっとだった」
「もうごった返してます」
笑いながら「戦場のようです」と言う彼女が大切そうに抱く女の子。
じっと、睨むように俺を見ている。
「可愛いね。1歳過ぎくらいかな?」
「んにゃっ!!」
下膨れたほっぺに向けて伸ばした手を思いっ切り弾かれた。
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