12665人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの、晃人さん……あまりこういった公共の場で大声で喚かないで下さい。恥ずかしいです…」
「あぁん?奏の奴が我が儘こくんだからしゃーねーだろ」
派手な登場をしたこの男性は、どうやら直井さんの御主人のようだ。
「禅も奏も生意気盛りで参るっての…………ところで、こちらは……どちらさんだ?」
漸く俺の存在に気付いた彼が、物珍しげに頭の先から爪先までジロジロ観察してくる。
訝しげな眼差しを浴びて居心地の悪さを感じながら、愛想良く「どうも」と頭を下げた。
目尻の小皺が少し気になるものの、背が高く、顔立ちの整ったかなり男前な御主人。
彼が、いつか直井さんと行った焼肉屋で遭遇した人物だとすぐに気が付いた。
忘れもしない、あの鋭い眼差し……
例えるなら、切れ味の良い刃物って感じ。
今思い出しても、背筋が凍りそうな、禍々しいオーラ付きで、俺を威圧感たっぷりに睨んできた男…
「いや、待てよ………見た事あんな…」
その男が「んー…」と、こめかみの辺りを押さえながら唸っている。
懸命に記憶を辿る彼を前に、ここはきちんと自己紹介するべきか……と、冷静な自分が判断を下した。
「初めまして。田嶋といいます。奥様とは昔一緒の職場でーーー…」
言い終える前に「あーあーあー!」と、御主人に遮られる。
最初のコメントを投稿しよう!