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まだ積もる話は沢山ある。
けど「じゃ、そろそろ……」と、長い立ち話に区切りをつけた。
「長々引き留めてごめん」
「いえ、田嶋さんが元気そうで安心しました」
「またどこかで会ったら、気軽に声掛けて」
「勿論です」
直井さんは、穏やかに微笑みながら「それじゃ……」と、背を向け歩き出した。
彼女の華奢な背中。
それに向かって、俺は「……直井さん」と声を掛けた。
数歩進んだ所で立ち止まり、振り返る彼女に問う。
「………今、幸せ?」
聞くまでもない事だし、俺が聞くべきじゃない事柄。
聞くだけ野暮だって分かってはいるけど、確認せずにはいられなかった。
彼女は、一瞬だけ不思議そうに目を丸くさせてから、すぐに細める。
「えぇ、誰よりも幸せな自信があります………なんて、言ったら、嫌味っぽいですかね?」
そうおどけてみせる彼女に、俺も負けじと言う。
「俺も幸せだよ。直井さんに負けないくらい」
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