魔 -マ-

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母が営んでいたスナックの、常連客のおじさんだ。 おじさんは、夜に酔った状態だが子守りをしに現れたり 運動会などの学校行事に顔を出したり 休日には外に遊びに連れ出してくれたりもした。 写真でしか父を知らないアタシにとっては 母よりも親しく本当の父親のように慕っていた人だ。 けれどある夜 アタシは悪戯された。 暗闇に浮かぶシルエット ハァハァと吹き掛かる酒臭い息 股間で蠢く指… アタシは 自分が何をされているのか理解できない程に幼かった。 だからただ 瞼をギュッと閉じて息を殺していた。 それからどうやって朝を迎え その後どう過ごしていたのかは覚えていない。 …思い出せない。
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