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「あー疲れたー」
「やっぱりちょっと腕落ちたね。互いに」
打ち合いを終えて、私達は面を取ってその場に座り込んだ。
「すげーなお前ら!!なに?もしかしてもともと剣道してたとか?」
「あ、ありがとうございますっ!はい!中学まで道場に通ってました」
「その道場がつぶれたので高校からは部活として剣道をしようと決めたんだ」
「なるほど。これなら即戦力になるかも…で、どうするんですか部長」
私達と同学年くらいの子が駆け寄ってきてニコニコと笑いながら楽しそうに話す。
その後ろで感心したように沖浦先輩が言葉を紡いだ。
問いかけられた部長と呼ばれた美男子は、眉間に深く皺を刻み気難しそうに腕を組んでいる。
―――…もしかして、入部できないとか?
こんな下手くそいえねぇって…
いや、そりゃ中三頃は受験のために剣道断ちしてたけど…
腕だってちょっと落ちただけだし…
「合格だ」
「へ?」
そんなことを考えていると部長さんの声が耳に届いた。
拍子抜けする言葉に間の抜けた声が口から漏れる。
「明日から竹刀と練習着を持って此処に来い」
眉間に皺を寄せたままそっけなく言葉を紡ぐ。
そんな部長さんの言葉に私と烈火は顔を見合わせ、一度瞬きをしてから
「「よろしくお願いしますっ」」
立ち上がって深く礼をした。
一瞬
ほんの一瞬だけ
部長さんの口角が少しだけ上げられた気がした。
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