22人が本棚に入れています
本棚に追加
「……う。ゆ――」
遠くで誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。
懐かしい声。
いつも、私を呼んでくれる。
愛しい声。
けれど、記憶の中とどこか少し違う声。
「――う。ゆ…う。――悠!!」
だんだん声が近くなって、
やがてはっきりと自分の名を呼ばれた。
「ん……烈火?」
ゆっくりと目を開いて、
おぼろげに見えた人物の名を呟く。
そのまましばらくボーっと彼を見つめていると、
「悠……早く起きないと遅刻するよ」
呆れた声が降ってきた。
その一声で私は飛び起きる。
すると彼はいつも見る無垢な笑顔で、
「おはよう」と一言。
ニコニコと寝起きの自分に、
笑いかける彼に怒りを覚えながらも、
着替えるからと部屋から追い出す。
急いで寝間着から制服に着替えた。
それから昨日用意しておいた学校していた鞄を持って部屋を出た。
最初のコメントを投稿しよう!