-一章 想-

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「……う。ゆ――」 遠くで誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。 懐かしい声。 いつも、私を呼んでくれる。 愛しい声。 けれど、記憶の中とどこか少し違う声。 「――う。ゆ…う。――悠!!」 だんだん声が近くなって、 やがてはっきりと自分の名を呼ばれた。 「ん……烈火?」 ゆっくりと目を開いて、 おぼろげに見えた人物の名を呟く。 そのまましばらくボーっと彼を見つめていると、 「悠……早く起きないと遅刻するよ」 呆れた声が降ってきた。 その一声で私は飛び起きる。 すると彼はいつも見る無垢な笑顔で、 「おはよう」と一言。 ニコニコと寝起きの自分に、 笑いかける彼に怒りを覚えながらも、 着替えるからと部屋から追い出す。 急いで寝間着から制服に着替えた。 それから昨日用意しておいた学校していた鞄を持って部屋を出た。
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