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「お待たせ烈火!」
「遅いっ!ほら行くよ」
下に降りると玄関に烈火がいて、
軽く怒られながら私は靴を履いた。
靴を履いて視線を上げれば、烈火が真っ直ぐに手を伸ばしてくれている。
その手をとって、しっかり握り返し私は烈火と共に家を飛び出した。
「にしても私、いつも烈火に頼りすぎだよね」
午前の授業を終えた私は、一人中庭を散歩していた。
入学してからまだ一ヶ月と少し。
毎日のように昼休みに学園内を散歩しているけれど、この学園は一週間経ってもまだまだ見れていない場所が多くある。
ゆっくりと過ぎ行く景色をぼんやりと眺めながら、私は一人ごちた。
烈火とは、生まれたときの付き合いだ。
仲のいい幼馴染。
その関係が変わったのは一ヶ月ほど前のこと。
中学卒業の日に烈火に告白されて、私たちの関係は幼馴染から恋人へと変化した。
大好きな人。
大切な人。
頼りすぎて嫌われたら……
そう考えるだけでぞっとする。
そんな怖い考えを振り払うために頭を振って校舎の角を曲がろうとした。
その時――……
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