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「やっと、逢えた……ずっと、ずっと探してたんだよ。あの日、別れてしまってからずっと……」
ちょちょちょっと待って、
落ち着こう私。
とにかく落ち着こう。
何この状態、
何で私知らないイケメンに抱きしめられてるわけ!?
しかも別れたって何?
私付き合ったことあるの嬉しいかな悲しいかな、生まれてこの方烈火だけだよ!?
一体なんなのこの状況っ!!!!!
「あ、あの……感動してるとこ悪いんですけど、私…その、悠輝…さん?って人じゃないんですけど……」
恐る恐る口を開く。
軽く彼の胸を押せば、彼は静かに体を離した。
「覚えていないの?」
彼の口から紡がれた言葉は酷く悲しく響いた。
私が分からないと首を振ると、彼はそっか…と小さく呟いて立ち上がる。
それから私に手を差し出した。
「僕の名前は沖浦奏(オキウラ カナタ)二年生だよ。よろしくね」
ニコリと微笑まれる。
きらきらとキレイな顔が、さらにきれいに見える。
人の良い、人懐っこい笑みだ。
そんな彼の姿が夢の中の顔も知らない人物の姿と重なる。
その姿に見惚れながら、私は差し出された手を取り立ち上がった。
ぶんぶんと頭を振って幻を打ち消す。
それから沖浦先輩に向き直って言葉を紡いだ。
「私は一年生の藤本悠ですよろしくおね……」
「悠!!」
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