-一章 想-

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「やぁ、久しぶりだね。沖田。僕のこと、覚えてる?」 悠の姿が見えなくなった後、烈火は微笑して口を開いた。 彼と違う彼の名だったものを呼ぶ。 そんな烈火の言葉に奏も微笑し、「あぁ、もちろん」と答えた。 「んじゃあ、話は早いや」 くすっと肩を一度だけすくめてから、烈火は笑みを消し声のトーンを落として言葉を紡ぐ。 「悠は「悠姫」であって「悠輝」じゃない。だから、昔のことなんて覚えている必要ないし、思い出す必要もない。あんな辛いこと、忘れていた方がいい」 ――…あんたは一度悠輝を独りにした。    だから悠の傍にいる資格なんてない。 そんな思いを込めた烈火の言葉に、奏は返す言葉が見つからず、ただ、黙って俯いていた。 「まぁ、そういうことで失礼しますね。生徒会副会長の沖浦奏先輩」 口調を「烈」から「烈火」のものへと戻し、烈火はニコリと笑顔を作った。 悠と同じ様に一礼して教室へと戻る道を急いだ。 そして、奏とすれ違う瞬間。 「悠は僕の彼女です。先輩には渡しません」 「――…っ」 ぱっと顔を上げた沖浦に烈火は笑みを見せてから、その場を後にした。
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