捕まえたい女

21/30
前へ
/30ページ
次へ
…私は今、 自宅の自室に到着した。 ベッドに身を投げ出すこともせず、私はその脇に腰を落とした。 正しくは…力が抜けてしまった。 何もかもが本当に夢みたいで 信じられなかった。 室長は私をタクシーで送ってくれた。 タクシーに乗り込んだ室長は、一度離れた手を座席でもう一度握り直してくれた。 そして、私の家の近くまで来るとタクシーを止め、運転手に待つように言ってから自分も車外に出た。 タクシーから数十メートル離れた場所まで私を歩いて送り、そして… 今日、二回目のキスをくれた。 「おやすみ」 「おやすみ…なさい」 繋いだ手を…離すのが惜しかった。 室長の指が私の指先を名残惜しそうに離れていったのは… 自惚れだろうか。 室長を乗せるタクシーを見えなくなるまで見送った。 部屋に入って 一人になっても 私の鼓動は なかなか治まらなかった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3769人が本棚に入れています
本棚に追加