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店を出た路地で向き合う二人。
少し距離が開(ア)いていた。
「あ、すみません」
歩道を歩く歩行者とぶつかりそうになった。
私が謝りながら端に寄ろうとすると、室長が私を肩で引き寄せた。
私の肩に置かれたその手はすぐに離れて、触れたか触れないかわからなかったくらい。
でも…
たしかに触れていた。
「すみ…ません」
「金曜だから人が多いな」
室長は頭一つ抜き出た長身で、辺りを見渡した。
「時間が大丈夫なら…もう一軒どうだ?酒、あまり得意じゃなかったらカフェでもいい。俺も酔いを冷まそう」
「あ、あの…もう少し…飲みませんか…?」
アルコールの力って…すごい。
こんなこと、二度と言えないかもしれない。
私の大胆かつ身の程知らずの言葉に、室長は微笑んだ。
「実は…俺もまだ飲みたい気分だ」
心臓が…
痛いくらいに激しくなる。
でもこれは…
アルコールのせいだけじゃ…
ないんだから…
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