捕まえたい女

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週末は会社が休みだというのに、どこかそわそわしていた。 休みだから… そわそわしていたのかもしれない。 …室長のことばかり考えていたから。 その気持ちを落ち着けるためにか、いつもは買い物に出掛けるけれど、それもせずにゆっくりと自宅で過ごした。 珍しく父も母も自宅にいて、三人が揃う休日は本当に久しぶりだった。 我が家の食事は全て家政婦が作っている。 母は料理はしない。 母も父の会社で監査役として経営に携(タズサ)わっている。 母には今まで料理をする時間もなかった。 私は夕方、家政婦がキッチンで作業を始めたのを見計らってキッチンに忍び込んだ。 いつか… …ううん。近いうちに、室長に料理を作ってあげたいから。 「お嬢さま…どうされました?」 家政婦の洋子さんが手を動かしながら私を見る。 「…何か…手伝わせてくれない?」 洋子さんが驚いて声をあげた。 「そ、そんなこと、お嬢様にさせられませんよ」
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