捕まえたい女

3/30
3772人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
少し緊張して 室長の横を歩く。 私が急がなくても 室長の歩調はゆったりとしていて 私が… というよりも、 室長が私の横で歩いてくれていたのかもしれない。 夜の街は 車の音や開いたドアから聞こえてくる店の音楽、人の笑い声で賑やかなはずなのに 私にはそのどれもが聴こえてこずに すぐ耳元で聞こえる自分の鼓動を避(サ)けて 室長の声を聞くのに必死だった。 「野崎君…時間は大丈夫なのか?」 歩きながら私を斜めに見下ろす室長。 会社とは違う、少しだけ乱れた髪とリラックスした表情だった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!