第1章

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『聞いてたから、花見の誘いが強制参加に変わったんだろ』 「どういう意味だ?」 『2人揃って家に引き籠もってウジウジしててどうすんだ?』 「ウジウジって……」 『今まで何年もそうやって過ごしてきて、美桜ちんに変化はあったのか?』 「……」 『ねぇーんだろ?』 「ねぇーな」 『だろ?……ってことはそれじゃダメってことなんじゃねぇのか?』 「……」 『だいたい美桜ちんが落ち込んでる時に、お前まで辛気くさくてどうすんだ?』 「……」 『なぁ、蓮。正直、俺には美桜ちんの心の傷がどのくらいの深さなのかも、今がどんな状況なのかも分からねぇ』 「……」 『確かに人間には悩む時間が必要だし、そんな時、傍で寄り添ってくれる奴がいるってだけで救われる』 「……」 『でもな、悩む時間が増えると新たな不安を引き寄せる』 「新たな不安?」 『不安な時ほどネガティブ思考になる。ネガティブ思考がまた新たな不安を引き寄せる。それの厄介なところは、実際に起きる可能性の低いことまで、既にすぐそこまで迫っているような錯覚に陥るところだ』 「永遠に不安が続くってことか」 『あぁ、傍に寄り添う人間がやらないといけないことは、その不安のループを断ち切ってやることだと俺は思う』 「そうだな」
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