第1章

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◆お花見 2◆ 重たい瞼をゆっくり開くと、カーテンの隙間から光が天井を淡く映し出していた。 それがすっかり見慣れた天井だってことに私は安心感を覚える。 数年前まで私が毎日見ていた天井は施設の天井で素材が木で茶色の天井だった。 その所為かここに来てすぐの頃は、この白い天井が眩しく見えた。 小さく顔を動かすとそこにはやっぱり見慣れた蓮さんの顔。 蓮さんと一緒に生活するようになり、前に比べるとずいぶん規則正しい生活を送るようになった。 そのお陰で、私の寝起きの悪さはかなり改善されたらしく、こうして蓮さんより先に目が覚めることも増えてきた。 寝ている時の蓮さんはとても無防備で、そんな蓮さんを見ると私は無性に嬉しくなる。 私は蓮さんを起こさないように細心の注意を払いながら蓮さんの方に身体を向ける。 私が身体を動かすと蓮さんは無意織に私の頭の下に置いている左腕と身体に巻き付けている右腕で私を抱き寄せる。 これはずっと変わらない蓮さんの癖。 その変わらない蓮さんの癖に私の顔は綻ぶ。 抱き寄せられたら私の視界いっぱいに映る蓮さんの顔。 その顔は相変わらずとても整っている。 ……寝顔がこんなに格好いいって、一体どういうことなんだろう。 そんなことを考えながら、私は額にかかっている髪を掌で避けた。
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