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結婚8年目になる私は、すっかり夫への愛情も何も無くなっていた。
生理的に受け付けない存在へと変わりつつある。
役場へ行って離婚届の用紙を手にすると、私は直ぐに家に帰り静かにボールペンを滑らせた。
菅谷 麻紗
これが私の名前。
だけれど…この書類一枚で旧姓へと戻る…。
山河 麻紗
長い長い結婚生活にも終止符が打たれるんだな…。
しみじみと思いに浸りながら離婚届を夫の部屋へと、そっと置いて荷物をまとめて足早に出ていった。
早く先輩に会いたい一身でいっぱいだった。
私が出ていくと大騒ぎになる事は予想出来たが、これ以上には堪えられない。
こうするしか選択肢は無かったのだ。
はち切れそうな糸がプツリと切れたかの様に、涙が溢れ出てくる。
こんなになるまで我慢してたんだな。
幸せになるために結婚したのに、何で今は幸せになるために離婚するんだろうか。
答えの無い疑問が、脳内を駆け巡っては消えていく。
独身に戻って、恋も仕事もやり直そう。
落ちていく涙を拭きながら、私は歩調を速めた。
行き先は母親か一人で暮らしている、古い一軒家。
「ただいまー」
部屋の奥から足音が大きくなってくると、母親が驚きながら声をあげた。。
「うわーっ!!ドロボーかと思ったー!!」
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