side 渉

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「負けだって。俺の負け、だから……」 とうとう恐怖から一粒涙が落ちた。 ハラハラと溢れ出す涙が睫毛に溜まる。 その睫毛をチュッと吸う。 「じゃあ、指の変わりに俺が入っていい?」 そう聞くと、兄さんは眉毛を歪ませたあと、瞳を濁らせる。 その瞬間、兄さんは全てを諦めて瞳を閉じた。 閉じた変わりに、涙を俺の肌に落とす。 ポタポタと。 泣かないで。 泣かないで。 泣かないで? なんで泣くの? 優しく慣らしてるじゃないか。 1本ずつゆっくり優しくしてやってるじゃないか。 俺だけが気持ち良くならないように、兄さんだってイかせてあげてるのに。 入り口にぐぐっと押し込むと、キツく唇を噛み締める。 「兄さん、愛してるよ?」 涙が流れた跡を下から上に舐めり、目元に溜まった涙を吸い上げる。 ふるふる震える背中をあやすように何度も何度も撫でる。
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