第1章

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「普通でいい」 「普通?」 「いつもと同じようにしてればいい。自分を偽る必要なんてねぇーんだ。緊張するなら無理にそれを隠す必要もない」 「うん」 「お前が楽しんでいるとみんなが喜ぶ」 「そうなの?」 「あぁ。お前はそういう存在なんだ」 蓮さんが何を言いたいのか、いまいち分からない。 だけど唯一、分かった事といえば私は思う存分楽しんでいいってこと。 だから―― 「分かった」 私は頷いて見せた。 蓮さんの手に支えられながら車高の高い車から降りると 『お疲れ様です』 『おはようございます』 四方八方から独特の口調の言葉が飛んでくる。 小心者の私はやっぱりその声達に怯んでしまいそうになるけれど 「美桜」 蓮さんが穏やかな表情で私の手をキュッと握ってくれるから 「うん」 私は、小さく深呼吸をしてできる限り平常心を保って 「おはようございます」 にっこりと微笑む事ができた。 出迎えてくれたのはB-BRANDの幹部の人達で、知っている顔が多かった。 中には何度か話したことがある人もいて私が感じていた緊張感は会場である公園内に着く頃には随分和らいでいた。
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