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「あれだけいても、止めている奴らは必死なんだよ。ヒカルは一見、頭脳派っぽいけど、キレたときは完全に武道派に変わるからな。しかも、頭を使って暴れるからなおさらタチが悪い」
「……そうなんだ。いつものヒカルとは別人みたいだね」
「アユのことになるとヒカルは冷静さを失うからな」
蓮さんはそう言って苦笑していた。
私は、いつもと違うヒカルを見て、ヒカルがどれだけアユちゃんのことを好きなのかが少しだけ分かったような気がした。
「あの女」
「え?」
「お前に因縁をふっかけてきた女」
「あ、倉本さん?」
「知ってんのか?」
「覚えてないんだけど、小中学校の時のクラスメイトなんだって」
「覚えてないって……じゃあ、なんで名前知ってんだ?」
「自分で言ってた。でも、覚えてないって言ったら
すごく怒るから、覚えてるフリしたんだけど“倉本さん”を“倉木さん”って間違って呼んだから、余計に怒らせちゃって」
「お前、何気に残酷だな」
「残酷?」
「警察の調書の時に言ってたらしいけど、あいつお前に憧れてたらしいぞ」
「はっ!? 冗談でしょ?だって、敵意剥き出しだったよ」
「お前、あの女見て何か思わなかったか?」
「なにかってなに?」
「自分に似てるなとか」
「私に似てる?」
……そう言えば、髪の色や長さ。
リップやグロス、チークの色は似ていたかもしれない。
「全部、お前の真似をしていたらしい」
「……」
「髪の色も、化粧の仕方もお前の真似をしていた。瞳もお前と同じ色にする為にカラコンまで使っていたらしいぞ」
「……」
「多分、気付いて欲しかったんじゃねぇーか?」
「……そうかもね」
てっきり、彼女は蓮さんのファンだと思っていた。
だから、私に敵意を露わにしていたんだと……。
蓮さんの言うことが正しかいとすれば、クラスメイトだということにすら気付かなかった私にも非があったんだと思う。
私は罪悪感から胸に小さな痛みを感じた。
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